腰痛を引き起こす不良姿勢にはいくつかのパターンがあり、その中の一つに「フラットバック」と呼ばれる姿勢があります。
今回は、「フラットバック」についてのコラムをお届けします。
フラットバック(Flat back)は医学用語で、直訳すると平背(へいはい)と言います。脊柱を真横から見た時に、背中から腰(特に腰椎部分)にかけてまっすぐに見えることからフラットバック(図1)と呼ばれています。
図1.フラットバック
脊柱はまっすぐの方が良いと思っている方が多いようですが、それは真正面や真後ろから見た時の話であって、真横から見た時の脊柱は緩やかなS字状の弯曲を描いているのが正常です。これは生理的弯曲と呼ばれ人間が直立を保つためには無ければならない弯曲で、強すぎても弱すぎても腰痛などの不快症状を発症するようになってしまいます。
腰椎は通常、前弯(前に凸してる状態)しているものですが、しばしば前弯が少なくなる、あるいは消失してしまうことがあります。フラットバックを起こした方の腰仙角(腰椎と仙骨との角度のことで正常値は約15〜30°)が正常値よりも浅く、骨盤全体の後傾が強くなるので腰椎の前弯が消失してしまうのです。(図2)
図2
一見すると胸を張って姿勢が良いようにも見えますが脊柱の生理的弯曲を逸脱した状態なので腰痛を引き起こしやすい姿勢であることには変わりません。
フラットバックになってしまうと歩行時などに地面から伝わった着地衝撃や身体の重さによる圧縮力を分散することができなくなるので、椎間板の摩耗を早めたり、椎間板が後方へ突き出るような力が加わるのでヘルニアを誘発してしまう可能性があります。
このため下肢を支配している神経根を圧迫してしまい、臀部や大腿部後面、下腿部後面の痺れや痛みを引き起こしてしまうこともあります。
また、フラットバックの方はどちらかというと立っている時よりもイスに座っているときに腰の痛みを訴えることが多いのが特徴です。腰仙角が浅く骨盤が後傾してしまっているためイスに深く腰掛けることが出来ないからです。例えイスに深く座っていても、程なくお尻の位置が前にズレてしまい、やがて図3のような座り方になってしまいます。そのため腰から頚肩にかけて大きく背中が丸くなってしまい、腰痛だけでなく、頚肩部に痛みが出るようになってしまうのです。
図3.間違った座り方
■腰痛を少しでも緩和するために
先にも述べたとおりフラットバックの方はイスに長時間座ることで腰に痛みを訴える方が多いので、デスクワークの方は座り方を一工夫する必要があります。
お勧めはイスの座面部分に折りたたんだタオルを置き、坐骨結節と呼ばれる部分にタオルがくるように座ります。それにより自然な腰椎の前弯カーブを保てるようになろので腰の痛み、背中、頚肩痛を和らげる一定の効果があります。
↓座り方につきましては下記のコラム参照してください。
http://www.chitokara-c.com/m/column/0903.html
■フラットバックを改善するための方法
フラットバックになってしまう原因は様々ありますが、右図の@大臀筋(お尻の筋肉)、Aハムストリングス(大腿部後面の筋肉の総称)と呼ばれる二つの筋肉が過剰に硬くなることで骨盤が後傾することで、腰椎の自然な前弯が減少してしまう、ということが大きな要因であると言われています。つまり、フラットバックを改善するためには、大臀筋とハムストリングスをストレッチする必要があるのです。
また、大腰筋、脊柱起立筋、大腿直筋の筋弱化でもたらされることも多いので、筋力トレーニングを行うことも重要になります。
図4.硬くなると良い姿勢の妨げになる筋肉
とは言えなかなか上記全てを実践するのは難しいでしょうから、臀部と腿の後ろ側の筋肉の収縮を意識しながら、@大臀筋、Aハムストリングスのストレッチ行うと良いでしょう。
■ストレッチ方法一例
最後に、「大臀筋」と「ハムストリングス」のストレッチ方法の一例をご紹介します。フラットバックに心当たりのある方は、ぜひお試しください。
図5.ストレッチ方法一例
@まず、足首を反対側の膝に乗せます。
A軽く膝の上と足首に手を添え、肘で膝を軽く押さえます。
Bこのままゆっくりと上体を前傾します。