[The impact of psychological readiness to return to sport on subsequent ACL injury: A systematic review]https://bjsm.bmj.com/content/48/22/1613.abstract
これは、British Journal of Sports Medicine (BJSM)に掲載されたエビデンスレベルの最高位の論文で、ACL再建術後の身体的な回復だけでなく、「心理的準備性」や「メンタル」が再損傷リスクや復帰率にどう影響するかを分析したものとなります。
目的:
ACL再建手術を受けたアスリートにおいて、心理的準備性(恐怖心の有無や自信)を評価する指標(ACL-RSIなど)が、実際の競技復帰率や、復帰後の再断裂リスクとどのように相関するかを明らかにすること。
方法:
複数の高品質な前向きコホート研究を統合したシステマティックレビュー。術後6ヶ月〜24ヶ月時点での「心理的評価スコア」と、その後の「競技復帰の成否」「再受傷率」を追跡調査したデータを解析。
要点:
- 筋力と自信の乖離:
筋力やジャンプテストが左右差10%以内(合格基準)に達していても、心理的準備性スコアが低い選手は、高い選手に比べて競技復帰率が有意に低い。
- 再損傷リスクとの相関:
心理的な恐怖心が強いまま復帰した選手は、逃避的な代償動作(不自然な着地など)を無意識に行うため、結果として再断裂リスクが高まる可能性が示唆されている。
- 復帰のボトルネック:
競技復帰を阻む最大の要因は、膝の物理的な不安定性ではなく再負傷への恐怖心であるケースが半数以上にのぼる。
- 客観的評価の重要性:
「ACL-RSI(ACL Return to Sport after Injury scale)」などの質問票を用いた定量的な評価が、復帰判断の必須項目として推奨されている。
臨床的含意:
- 「心・技・体」三位一体の評価:
復帰判断は「時間」+「機能基準(筋力等)」+「心理的基準」で行う。身体機能が合格点でも、心理スコアが低い場合は復帰を遅らせるか、メンタルケアを並行する。
- 段階的露出(Graded Exposure):
恐怖心を取り除くため、リハビリ初期から対人接触や不規則な動きを段階的に導入し、自信を積み上げさせるプロトコルが必要。
- 多職種によるモニタリング:
理学療法士は筋力だけでなく、選手の不安な発言を記録し、外科医やコーチと共有して復帰強度を調整する。
注意点:
- 介入方法の未確立: 心理的準備性が低いと判明した際、具体的にどのようなメンタル・トレーニングが最も有効かについては、まだ研究の余地がある。
- 文化・競技背景の差異: 競技レベルやプロ・アマの違いによって、心理的プレッシャーの質が異なるため、個別性の考慮が必要。
出典:
Ardern CL, et al. Psychological responses matter: A systematic review of factors associated with return to sport after ACL reconstruction. British Journal of Sports Medicine.

